「トランス脂肪酸ってヤバいらしい」
そんな話を聞いて、なんだか怖いと思っているママは多いかもしれません。
- とにかく食べない方がいい。
- でも何を食べなければいいの？
- そもそも食べないなんてできるの？
不安を挙げればキリがありません。
では、「トランス脂肪酸」の一体何が“ヤバい”のでしょうか？
あふれる情報に右往左往する前に、「トランス脂肪酸とは一体何なのか？」きちんと整理をしてみたいと思います。
「トランス脂肪酸」って何？危険なの？
トランス脂肪酸には、2種類あります。
ひとつは、天然に食品中に含まれているもの。牛や羊などの反すう動物の胃で微生物によって生成され、乳製品、肉に存在しています。
もうひとつは、油脂を加工・精製する工程でできる工業由来のもの。マーガリンやショートニングなどが挙げられます。（※出典1）
私たちがよく耳にする「トランス脂肪酸はヤバい！」という言葉。いわゆる「ヤバい」とされているトランス脂肪酸は、後者の工業由来のトランス脂肪酸に限られると報告されています。（※出典1,2）
トランス脂肪酸は、食品からとる必要はなく、むしろ、とりすぎた場合の健康への悪影響が注目されています。悪玉コレステロールと呼ばれているLDLコレステロールを増加させ、善玉コレステロールと呼ばれているHDLコレステロールを減少させることで、心筋梗塞などの冠動脈疾患の発症に影響すると言われています。（※出典1,3）
[st-kaiwa1]日常的にトランス脂肪酸を多くとりすぎている場合に、
少ない場合と比較して心臓病のリスクが高まるということです。[/st-kaiwa1]
トランス脂肪酸はどんなものに含まれているの？
では、トランス脂肪酸が含まれている食べ物には、どんなものがあるのでしょう？
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マーガリン・・・ 平均7.0ｇ/100g
ビスケット類・・・ 平均1.8ｇ/100g
ショートニング・・・平均13.6ｇ/100g
スナック菓子・・・ 平均0.62ｇ/100g
クリーム類・・・ 平均3.02g/100g
マヨネーズ・・・ 平均1.24g/100g
（※出典3）
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なんだか子どもが好きそうなものが多い印象ですね。
しかしながら、調査によると、トランス脂肪酸濃度は年々低くなる傾向にあるようです。食品企業によるトランス脂肪酸低減の効果が現れていることは、とても嬉しいことですね！（※出典4,5）
トランス脂肪酸は食べてはいけないのか？
WHO （世界保健機関）は、心血管系疾患のリスクを低減し、健康を増進するための目標として、トランス脂肪酸の摂取を総エネルギー摂取量の１％未満に抑えるよう提示しています。そして、2023年までにトランス脂肪酸をゼロにするという目標を打ち出しています。（※出典6）
トランス脂肪酸の摂取量を規制している国もありますが、日本人のトランス脂肪酸の摂取量の平均値は、総エネルギー摂取量の0.3％であることが分かっており、現時点では日本には規制はありません。（※出典7）
食品からトランス脂肪酸をとることによる日本人の健康への影響について、
- 通常の食生活では、健康への影響は小さい。
- ただし、脂質に偏った食事をしている人は留意する必要あり。
- 脂質は重要な栄養素。バランスの良い食事を心がけることが必要。
とした上で「食品事業者において、食品中のトランス脂肪酸含有量は近年減少傾向にあるが、一部製品は高いものがみられることから、引き続きその低減に努める必要がある」 と述べています。食品事業者は、食品の風味や品質を維持しながら、食品中のトランス脂肪酸を減らす努力をしています。（※出典8）
そして、私たち消費者が、意志をもって食品を選ぶことも世の中の流れを変えることにつながるのではないでしょうか。
トランス脂肪酸は人にとって不可欠な栄養素ではありません。健康のためには、その摂取量は１％ エネルギー未満に留めることが望ましく、１％ エネルギー未満でもできるだけ低く留めることが望ましいとされています。（※出典1）
[st-kaiwa1]少量を食べる分にはそれほど気にする必要はないけれど、食べないに超したことはないということですね！[/st-kaiwa1]
そして、日本人のトランス脂肪酸の摂取量については成人の実態であり、子どもについては摂取量をきちんと把握できていないのが現状です。ここで、子どもの総エネルギーの１％のトランス脂肪酸の量（参考値）を計算してみましょう。
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1〜2歳 男 950kcal×1％＝9.5kcal、 女 900kcal×1％＝9kcal →約1g
3〜5歳 男 1300kcal×1％＝13kcal、 女 1250kcal×1％＝12.5kcal →約1.3g
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だいたい1gくらいですね。大人ではだいたい2g程度となるので、大人の半分ほどの量です。
トランス脂肪酸を含む食べ物は子どもの好きなものも多く、大人と同じように食べていると食べ過ぎの危険性があります。日常的にお菓子を食べたり、食事に菓子パンを食べたりすることは、やはりおすすめできません。バランスのよい食事を基本にして、お菓子はたまの楽しみにしてあげるとよいかもしれません。
情報に振り回されないで！
トランス脂肪酸は、確かに健康に悪影響を及ぼす成分のようです。食べる量や頻度については気をつけた方がよさそうです。
しかしながら、トランス脂肪酸という食品中のひとつの成分だけに着目して、食品に白黒つけてしまうのはおすすめしません。ある成分を極端に避けていると、食生活に無理を生じさせる可能性があるからです。まずは、栄養バランスのよい食事を基本とすること。いろいろな食材を食べることで、リスクを分散させることにもつながります。
食べることは心身の成長と健康につながることはもちろんのこと、生活に楽しみや潤いをもたらしてくれるもの。そのためにママとしてできることは、あふれる情報に一喜一憂することではありません。
普段の生活においてできることは、こんなことかもしれません。
栄養バランスのよい食事を心がけよう！
食品を買うときは成分・原材料表示を確認しよう！
たまの楽しみを大切に、もっと食べることを楽しもう！
情報に振り回されないママになろう！
適切な知識をもって、子どもと食べることをもっともっと楽しんでもらえたらうれしく思います！！
参考文献
（※出典1）厚生労働省｜日本人の食事摂取基準2020｜https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf
（※出典2）Bendsen NT, Christensen R, Bartels EM, et al. Consumption of industrial and ruminant trans fatty acids and risk of coronary heart disease: a systematic review and meta-analysis of cohort studies. Eur J Clin Nutr 2011; 65: 773─83.
（※出典3）内閣府食品安全委員会｜「トランス脂肪酸」ファクトシート｜http://www.fsc.go.jp/sonota/54kai-factsheets-trans.pdf
（※出典4）農林水産省｜食品中の脂質とトランス脂肪酸濃度｜平成26・27年度調査結果（穀物加工品、乳類、油脂類、菓子類、指向飲料類、調味料・香辛料類、調理加工食品｜https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/trans_fat/t_kihon/content/h2627_transfat.html
（※出典5）農林水産省｜食品中の脂質とトランス脂肪酸濃度｜平成28年度調査結果（揚げもの、調理冷凍食品）｜https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/trans_fat/t_kihon/content/h28_transfat.html
（※出典6）WHO｜REPLACE Trans Fat-Free by 2023｜https://www.who.int/nutrition/topics/replace-transfat
（※出典7）厚生労働省｜トランス脂肪酸に関するQ&A｜https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000091319.html
（※出典8）農林水産省｜食品中のトランス脂肪酸の低減｜https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/trans_fat/t_torikumi/red.html
（参照はすべて2020.2.8）
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