※この記事は、科学的根拠をもとに情報をお伝えするため、管理栄養士である私の学びのアウトプットです。
日本人の食事摂取基準(2020年版)に以下のような記載があります。
トランス脂肪酸は工業由来のものと、反芻動物の胃で微生物により生成され、乳製品、肉の中に含まれているものに大別される。冠動脈疾患や脂質系のトランス脂肪酸の影響は前者に限られると報告されている。(※出典1)
こちらの文章の根拠となっている論文を読んでみました。
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研究の方法
今回のシステマティックレビューとメタ分析は、
- Pubmed
- Ovid
- Web of Science
- SciFinder Scholar
を使用して行なわれています。
この研究では、工業由来および反すう動物由来のトランス脂肪酸(TFA)摂取と、冠動脈性心疾患(CHD)の発症率との関連を説明するすべての前向きコホート研究をレビューすることを目的としています。
研究結果と考察
最終的に9つの研究がシステマティックレビューの対象となっています。
トランス脂肪酸(工業由来)と冠動脈性疾患との関連
工業由来のトランス脂肪酸(IP-TFA)摂取が冠動脈性疾患(CHD)のリスクを高めることを示唆したが、この関連に統計的優位差はなかった。
トランス脂肪酸(反芻動物由来)と冠動脈性疾患との関連
反すう動物由来のトランス脂肪酸(R-TFA)と冠動脈疾患(CHD)の間に優位な関連はなかった。
総トランス脂肪酸摂取と冠動脈性疾患との関連
総トランス脂肪酸の摂取量が冠動脈性疾患(CHD)のリスク増加に関連していることが分かった。
考察
工業由来のトランス脂肪酸は、統計的優位差はないものの冠動脈性疾患(CHD)のリスクを高めることを示唆した。
それとは対照的に、天然由来のトランス脂肪酸摂取は、冠動脈性疾患のリスクに影響を及ぼさないか、わずかに保護的でさえあることを示唆している。
しかし、これは天然由来のトランス脂肪酸が、
- 工業由来のトランス脂肪酸よりもはるかに摂取量が少ないこと
- 心臓保護作用があるかもしれない乳製品として摂取されること
という事実があることの影響も考えらる。
デンマークでは、工業由来のトランス脂肪酸摂取を総脂肪摂取量の2%以下に制限している。この法律では、天然由来のトランス脂肪酸からの摂取については除外されている。しかしながら、トランス脂肪酸の摂取源については、天然由来のトランス脂肪酸であれば問題ないということまでは言及していない。
これは下記の考え方に基づいている。
- 通常の食品を摂取するときに天然由来のトランス脂肪酸を毎日大量に摂取するリスクは低い、若しくは、工業由来のトランス脂肪酸の方が摂取量が多い
- 食品から天然由来のトランス脂肪酸を除去することは難しいが、工業由来のトランス脂肪酸を除去することは可能である
- トランス脂肪酸は不要であるとはいえ、天然由来のトランス脂肪酸を含む乳製品などの食品は、健康に寄与する食品であることが多いため、これらの食品の摂取を制限すべきではない
まとめ
トランス脂肪酸の総摂取量が増えることで、冠動脈性疾患のリスクが増加するため、総摂取量は減らすことが望ましいようです。
その際、天然由来のトランス脂肪酸を除去するよりも、工業由来のトランス脂肪酸を除去する方が実施可能性が高いため、工業由来のトランス脂肪酸の摂取量を少なくするような食品選択が求められるのではないでしょうか?
乳製品はカルシウムのよい摂取源になるなど、利点も多くあります。食べないという選択をすることは推奨されるべきではないと考えます。天然由来のトランス脂肪酸摂取量を減少させるために、低脂肪の乳製品を選択するということもひとつの選択肢であることも提案できることなのではないかと思います。
参考文献
(※出典1)厚生労働省|日本人の食事摂取基準(2020年版)|脂質|https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586558.pdf
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